喫煙や栄養不足は薄毛に影響?|生活習慣と男性型・女性型脱毛症

喫煙などの生活習慣が薄毛に影響するという話はよく聞かれます。「頭皮の環境」を改善すると謳ったシャンプーなどもたくさん売られています。生活習慣は薄毛を引き起こしたり改善したりする効果を持つのでしょうか?メカニズムは今のところ不明ですが、ある種の生活習慣が男性型脱毛症・女性型脱毛症と関係することは医学的にも確かだと見られています。この記事ではそうした例を取り上げ、研究内容の紹介を中心にしてできるだけ正確に薄毛と生活習慣の関係を解説していきます。

薄毛への影響が大きいのは遺伝?それとも生活習慣?

まずは薄毛に対する遺伝的な要因と生活習慣の影響を大まかにまとめておきます。

男性型脱毛症

男性型脱毛症と遺伝の関係はかなりはっきりしており、どの遺伝子がどう影響するかということもわかってきています。男性型脱毛症は毛の源である毛包が縮小する(「ミニチュア化」する)ことで起こり、男性ホルモンの働きが縮小の決定的な要因です。毛包の縮小が生じやすいかどうかは大部分が遺伝で決まります(※1)。

ただし、一卵性双生児(つまり遺伝子が同一)でも薄毛の進行度が違うケースがあるため、遺伝だけで決まるわけではないことも確かです(※2)。喫煙などの生活習慣も要因になると考えられています。

女性型脱毛症


女性型脱毛症の原因は男性型脱毛症ほどよくわかっていません。毛包が縮小するという点は共通していますが、男性ホルモンが関係しているのかどうか不明です。遺伝の影響があるのは確かですが、男性型脱毛症に比べて生活習慣や環境の影響が大きいようです(※3)

薄毛と喫煙

喫煙は薄毛の要因として一般的によく取り上げられます。医学的研究でも、喫煙は男性型脱毛症と女性型脱毛症のリスクを高めるとされています(※1)。

台湾人の男性型脱毛症患者740人を対象にして喫煙習慣と薄毛進行度の関係を調べた研究(※4)では、次のような結果が出ています。

喫煙経験がない人に比べて
・喫煙者(または過去に吸っていた人)が重症化するリスクは1.77倍
・1日に20本以上吸っている人が重症化するリスクは2.34倍

一方、男性型脱毛症・女性型脱毛症を発症している人と発症していない人を比較したトルコの研究(※5)では、喫煙(や飲酒)が発症のリスクになるというデータは出ませんでした。

喫煙が発症の要因となるかどうかは不明ですが、薄毛の進行を防ぐためには禁煙するのが得策のようです。

薄毛と栄養素

薄毛と関係があるとされている栄養素はビタミンA、ビタミンD、鉄分です(※6)。

ビタミンAの摂りすぎ


ビタミンAの摂りすぎは男性型脱毛症・女性型脱毛症の両方と関係があるとされます。

通常の範囲の食事をしていればビタミンAを摂りすぎることはありませんが、ビタミンAをとくに多く含む食品(レバーなど)を大量に食べたり、ビタミンAのサプリメントを摂りすぎたりするとビタミンA過剰になる恐れがあります(※7)。

ビタミンDの不足

ビタミンDの不足は男性型脱毛症と関係があるとされています。女性型脱毛症については意見が分かれています。

日光(紫外線)を浴びると皮膚でビタミンDが作られるため、普通の生活をしていればビタミンD不足になることはないでしょう。ただし高齢者は皮膚の機能が低下しており、屋外に出る機会も減少しがちなので、ビタミンDを含む食品(きのこ類など)の摂取を心掛けたほうがよいかもしれません(※8)。

鉄分の不足

鉄分については男性型脱毛症・女性型脱毛症に関係があるとする研究と関係がないとする研究があり、決着がついていません。しかし不足している場合には(念のため)補っておいたほうがよいという意見が主流です。

鉄分は不足しやすい栄養素です。日頃から鉄分を多く含む食品(魚介類・海藻など)を摂るように心掛けるとよいでしょう。たんぱく質と一緒に摂ると吸収が高まります(※9)。

薄毛とメタボ・生活習慣病

https://www.photo-ac.com/main/detail/511488?title=メタボリック

メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満、脂質異常、高血糖、高血圧)や生活習慣病(糖尿病、脂質異常症)は男性型脱毛症・女性型脱毛症と関係があると見られています(※10、11)。

メタボリックシンドローム生活習慣病は喫煙や栄養の偏りとも関係しています。したがって薄毛はこれらすべてと複雑に絡まり合っていると言えるでしょう。食事の偏り、食べ過ぎ、喫煙、運動不足などが直接的に薄毛を悪化させるわけではないとしても、巡り巡っていずれは髪の毛にも悪影響を与えることになると考えられます。

過剰なケアは逆効果。バランスのよい生活を心掛けましょう


健康的な方法で習慣改善を図るのであれば体によいことはあっても害になることはありません。しかし、薄毛を気にするあまり過剰なケアを行ったり度外れに神経質な生活を送ったりすると逆効果になることがあります。

例えば、髪の洗い過ぎ、頭皮のこすり過ぎは皮膚の機能を害します(※1)。「髪に効く・髪を育てる」などと宣伝されている育毛剤や育毛シャンプーを利用するだけならば害はないとしても、髪に悪影響があるほどに過剰なケアをすることは避けるべきです(※12)。

生活習慣改善による効果は目立たないものです。もし禁煙やサプリメントの摂取、ヘアケア・マッサージなどではっきりとした薄毛改善効果が現れるならば、すでにそうした治療法が研究で確かめられているはずです。とは言え、バランスの取れた生活を送るようにすれば全体的な健康につながり、薄毛の進行を遅らせる効果も期待できるでしょう。

※0)メンズケアクリニック新橋院
https://mcc-aga.com/clinic/shinbashi/

※1)沢井製薬 サワイ健康推進課「薄毛に負けない!」
https://kenko.sawai.co.jp/healthy/201904.html
※2)毛髪医学通信「『双子の男性型脱毛症報告』 男性型脱毛症には遺伝以外に環境の要因が影響する可能性が大きい」
https://www.fml.jp/society/record/fml-128.html
※3)An Bras Dermatol. 2015 Jul-Aug; 90(4): 529–543.「Female Pattern Hair Loss: a clinical and pathophysiological review」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4560543/
※4)Arch Dermatol. 2007;143(11):1401-1406「Association of Androgenetic Alopecia With Smoking and Its Prevalence Among Asian Men: A Community-Based Survey」
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/654456
※5)An Bras Dermatol. 2017 Jan-Feb; 92(1)「Frequency, severity and related factors of androgenetic alopecia in dermatology outpatient clinic: hospital-based cross-sectional study in Turkey」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5312176/
※6)Dermatol Ther (Heidelb). 2019 Mar; 9(1)「The Role of Vitamins and Minerals in Hair Loss: A Review」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6380979/
※7)健康長寿ネット「ビタミンAの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-a.html
※8)健康長寿ネット「ビタミンAの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html
※9)健康長寿ネット「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html
※10)Symbiosis Clinical Research in Dermatology「Androgenetic Alopecia: a Review and Emerging Treatments」
https://symbiosisonlinepublishing.com/dermatology/dermatology64.php
※11)International Journal of Women's Dermatology Volume 4, Issue 4, December 2018, Pages 203-211「Female pattern hair loss: A clinical, pathophysiologic, and therapeutic review」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352647518300224
※12)EMIRA「薄毛は治るのか? 治療現場の最前線 衝撃の原因と予防方法を第一人者に直撃」
https://emira-t.jp/special/6918/